ここはべスパー
商人や職人、冒険者などで賑わう町
この町で僕は小さな小鳥と出逢った

再び変化を始めたSky・・・
それ今までの変化の中で一番大きなものだった
体は大きく、滑らかな皮膚に覆われ
全体が鮮やかな朱色に染まった
翼には羽がなくなり薄幕のように変化し
しっかりした4本の足が現れた
「ドレイク・・・」
誰かがつぶやくのが聞こえた
僕もその姿をただ呆然とみつめた
Skyは ドラゴンの子供だった

「あれ、おかしいな」
「どうしたのです?」
「Hiroがちいさくなっちゃった・・・」
どうやらSkyは自分の変化に気づいていないようだった
まだ自分が酔っているのだろうかとしきりに首を振る

「それはSkyが大きくなったのですよ」
「ぼくが?」
「ええ・・・あとすこしで 大人になれますね」
「おとなに?」
あと少しで大人になれる。僕はそうつたえた
僕の予感が正しければ、あと少しでSkyはドラゴンへと成長することだろう
そしてドラゴンになってもSkyはSkyのまま
やさしくて、僕らはきっとよい友人でいられるだろう
(夢とは、さめるものじゃ、そのことだけを覚えておいてくれんかの?)
ふいにあの老人の言葉がよみがえる
夢の終わり・・・
それは僕とSkyの別れの時が近づいているということかもしれない
僕は漠然と、そんな不安に駆られた
目の前のSkyは大きくなった自分の体に戸惑っているようで
しきりにぐるぐる回ったり、翼をはためかせたりしている
それは見ていてとてもほほえましく
別れの時など、存在すらしないかのようだった
(まだ時間はあるさ・・・)
「そうですよSky、大人になればきっと魔法も使えるでしょう」
「まほう?」
「まほうってげんき?」
「ええ、元気です」
In vas mani
僕は呪文をとなえSkyに向けて開放した
そこにはふさぐべき傷はなかったが、柔らかな光がSkyを包み込む
「おぼえていますか?」
「これが、魔法です」
「げんきのまほう!」
「そう、元気の魔法」
僕ははじめてSkyにかけたときのようにいたずらっぽく言って見せた
「ぼくもまほうをつかえるの?」
「ええ、きっと使えますよ」
僕はもう一度「大丈夫」といった
「Skyなら俺たちよりも使いこなせるさ」
仲間たちもSkyを励ましている
「Hiro 僕も魔法を使ってみたい」
「う〜ん、そうですね・・・」
成竜ともよべるドラゴンは、その存在の神秘さからか自由に魔法を行使する
だが、ドレイクは魔法を一切行使することができない
その理由は定かではないが、それは幼竜だからとも、種族自体が違うのだとも言われている
そして今のSkyはドレイクだった
まして、人間と違い、呪文書も秘薬も必要とせずに呪文を行使する
ドラゴンたちにどうやって魔法の使い方を教えるのか
「そうですね、スクロールなら・・・」
僕は手持ちの姿隠しの巻物を取り出しSkyを呼んだ
「さ、Skyや、この巻物を読んでごらん」
テーブルの上に巻物を広げ、Skyの向かい側に座った
「これを?」
「そう」
じ〜〜〜
巻物を興味深そうにみつめるSky と
ぱく
「は・・・?」
ごっくん
「あああ・・・たべてはだめですっ」
結局、僕が止める前に姿隠しの巻物はSkyのおなかに収まってしまった
もちろん、体に入ったからといってその魔法をが身につくこともなかった
「Skyや、あれは食べるものではないのですよ」
僕は笑い出すのをなんとか抑えながらSkyにおしえた
「あれを読むと魔法が使えるようになるんですよ」
「そうなの?」
「ええ、だからおいしくなかったでしょう?」
「うん・・・」
羊皮紙でできたスクロールはまずかったのだろう
Skyはちょっと顔をしかめた
「さて、こまりましたね」
「どうしたの?」
「スクロールの手持ち、あれで最後だったのですよ」
「ごめん・・・」
「ま、大したことではないですよ」
あやまるSkyに笑って答えて
僕は誰かスクロールを持っていないか仲間に尋ねた
「チェインライトニングならあるんだが・・・」
「う〜ん、それは遠慮します」
できる事ならSkyには人を傷つける魔法を唱えてほしくなかった
何かを傷つけるということを、今はまだSkyには知ってほしくはなかった
結局、仲間の一人に魔法屋へスクロールを買いに行ってもらうことになり
僕はヒーリングのスクロールを頼むと
酒場で皆と一緒に仲間の帰ってくるのを待つことにした

待っている間もSkyや仲間たちは
肉を食べたり、ケーキを食べたりして時間をすごした
Skyは育ち盛りらしく、皆が驚くほどよく食べた

しばらくして仲間がスクロールを持って戻ってきた
あいにくグレーターヒールは手に入らなかったが
ヒーリングとキュアの巻物を仕入れてきてくれた
僕はそのスクロールを受け取るとSkyの前に出した
「さ、Skyや、もう一度この巻物を読んでごらん」
「うん」
今度は口に入れずに、巻物を見つめるSky
そして
In mani
淡い光が僕を包んだ
「おお」
「魔法だ・・・」
「やったな」
仲間たちの歓声がきこえる
Skyはキュアの魔法も唱え、そして
In vas mani
グレーターヒールも唱えて見せた
近くの馬を僕が唱えたのと同じ柔らかな光が包みこむ
「もう、応用して使いこなしているか?」
仲間が驚きの声を出した
ドラゴンの血族は魔法を自在に操る力を持っている
スクロールを使って魔法を唱えたことで
Skyの魔法の力が目覚めたようだった
「Hiro 元気の魔法!」
「ええ、すごいですよSky」
Skyが自分の力で唱えた魔法が元気の魔法だということに
僕は嬉しくなって笑いながらこたえた
「もう立派な大人になれますね」
「うん!」
僕はSky見上げた
Skyは自分が魔法を使えたことが本当に嬉しいのだろう
広いともいえない酒場の中をぐるぐる回ってみせた
そう
もう少しで、Skyは立派なドラゴンになるのだろう
そして、それは別れのときが近づいているということなのかもしれない
でも、最後まで幸せな夢でいたい
僕はそう思った

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