ここはべスパー
商人や職人、冒険者などで賑わう町
この町で僕は小さな小鳥と出逢った

それは思ったよりも早く訪れた
「Hiro・・・」
「どうしました?」
「体がなんかむずむずするんだ・・・」
自分に何かが起きていることを感じたのだろう
Skyの顔が不安に曇る
最後の成長の時が来たのだ

「はは、じゃあ少し外に出てみましょうか」
僕はなるべく明るくそういうと
Skyを酒場の外につれだした
仲間たちも続いて外へと向かう
外に出たとたん、最後の変化は訪れた
体の皮が剥け
中からさらに巨大な体が現れる
翼は広く、大きくなり
手足もこれまでよりも更にたくましくなった
そこにいるのはこの世界で最も気高き生き物
Skyはついにドラゴンへと成長したのだった
「おお・・・」
「ついに成長した」
仲間たちの驚きと喜びの入り混じった声がとぶ
「やりましたねSky、もう、あなたは立派な大人ですよ」
「うん、ありがとう・・・」
僕も笑顔で祝福した
けれど、Skyの顔はどこか不安げだった
「ねぇ、Hiro」
「どうしました?」
「ぼくは、ここにいてもいいんだよね?」
僕は、もちろんと答えた
「ぼくは、Hiroといっしょにいてもいいよね?」
僕は、僕も一緒にいたいと答えた
仲間たちも同じ想いだった
皆、Skyと一緒にいたいと、そうみんな言ってくれた
「ありがとう・・・」
そう答えたSkyはどこか悲しそうだった
「ありがとう、でも、声がするんだ・・・」
「声?」
僕は尋ねた、夢の終わりが近づいていることを感じながら
「うん、どこからか、帰っておいでって・・・」
「そうですか・・・」
夢は覚めるもの・・・
ならば、覚めても幸せでいられる
そんな夢であってほしいと思った
「Skyや」
「なに?」
「その声は、あなたにとって大切なものなのですか?」
僕はSkyを見つめて尋ねた
その声と一緒にいることがSkyの幸せなのか
僕は、それがどうしても知りたかった
「うん、僕にとって大切なものの気がする」
そう言ったSkyの顔には確かな確信があった
なら・・・
「なら、Skyはその声のところに行くべきでしょう」
僕はなるべく明るく、そう言った
僕がSkyにしてあげられることは,あと1つしか残っていないのだろう
僕はそれを実行することにした
「大丈夫ですよSky、きっと心配は要りません」
「え?」
「なに、一度あっちに行ったとしても、気が向いたらまた遊びに来ればよいだけのことですよ」
「Hiro・・・」
「僕たちなら大丈夫ですよ」
悲しそうなSkyに僕はいつもの様にいたずらっぽく笑って見せた
「そうですよ、またくればよいのですよ」
「俺たちはいつだってここにいるよ」
「いつだって、歓迎するぞ」
仲間たちの励ましがとても嬉しかった

僕は迷っているSkyに話しかけた
はじめてあった時の様に、傷つけたりしないように
なるべくやさしい口調にしようとしながら話しかけた
僕にできる最後のこと
それはSkyが悲しまずに旅立つことができるようにすること
「Skyや」
「うん」
「もし、Skyが声の元に行けば、今度は僕らがSkyを待つ人になるでしょう」
「・・・」
「でも、きっと大丈夫」
「え?」
「僕はSkyをいつまでも待ち続けれます」
「・・・」
「僕はいつまでもSkyを信じています」
「Hiro・・・」
「だから僕らの心配はしないでください」
「Hiroがそういうのなら・・・」
Skyは決心がついたようだった
上げたその顔には、もう迷いはなかった
「僕、帰るね」
「ええ」
「ありがとう」
「僕のほうこそ」
最後の挨拶をしたSkyの体を静かな光が包む
光は僕らの前で天へと吸い込まれるように登っていった
夢の終わり・・・
僕は夢が覚めたことを悟った

「帰ってゆきましたね」
「ああ、帰って行ったな」
仲間たちの声を呆然と聞きながら
僕はふと地面に目を戻した
そこにはSkyが最後の成長のときに床に落ちた皮があった
皮は3山分だった
僕はその皮を拾い、バックの中にしまった
少しでもSkyとの思い出を残しておきたい、そう思った

こうして、僕らはまた、普段どおりの生活に戻った
僕らは銀行前でいつものように他愛もない会話を行っている
そんな日常が過ぎていった
そんなある日、銀行前に珍しい訪問者が現れた
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