仲間も皆帰り、静かになった家の中で
僕は一人、Skyが贈ってきた本を読んでいた
『小さな物語』となずけられた著者不明のその本には
ドラゴンとその主人の切ない物語が書かれていた
「みなさんもうかえられたのです?」
声のほうを見ると義娘の若葉が愛犬の子紅をつれて立っていた
先ほどまで2階で休んでいたのだろう、眠たそうに目をこすっている
「うん、ああそうだ、若葉、ケーキたべるかい?」
ケーキという言葉に若葉は子供らしく元気よくうなずくと
僕の差し出したケーキを嬉しそうに食べ始めた
「ところでどうしてケーキがいっぱいあるのです?」
不思議そうに尋ねる若葉に、僕はSkyとのこと
そのSkyからケーキの贈り物があったことを話して聞かせた
「あぅ〜わかばもSkyさんとおはなししてみたかったのです〜」
「はは、そうだね、いつかきっと会えるよ」
「きっとね」
「こく・・・」
ふてくされる若葉をなだめるように僕はいった
と、若葉は僕の持っている本に気がついたようだった
「ところでその本は何の本です?」
「うん?若葉も読むかい?」
僕は若葉に本を渡し、若葉が読み終えるのを待った
読み終えた若葉はしばらく無言だった
僕は若葉に聞いてみた
「なぁ、エトランゼさんとSkyは幸せになれるのかな?」
「ひろさんはSkyさんのこと今でも大切に思っています?」
「ああ、Skyには幸せになってもらいと思っているよ」
当たり前だろうと答える僕に、若葉は笑いながら言った
「それなら、Skyさんはきっと幸せなはずなのです」
そういうと、若葉は棚からリュートを取り出した
そして、ぺこりと一礼をすると静かに歌いだした


おぼえていますか?
私に始めてかけた言葉
声をかけたのはあなたのほう
でも、言葉を信じたのは私
あなた信じてついてゆきます
信じられることは幸せなこと
私はあなたを信じます

幸せですか?
私を見つめるあなたの目
あなたを失うことは悲しいこと
だから私はあなたのそばに居ます
あなたを守りそばに居ます
信じられることは幸せなこと
私はあなたを信じます

悲しまないで
泣き崩れるあなた
私を失うことは悲しいこと?
でも私は悲しくないの
私はあなたを守れたのだから
信じられることは幸せなこと
私はあなたを信じます

想ってもらえるのはとてもうれしいこと
でも、あなたが悲しむと私もつらいの
だから笑顔で居てください
私はいつまでもあなたを信じています
だから
あなたも私を信じてください

・・・
すこし音の外れたリュートの音色にあわせて
幼い声が部屋に響き渡った
聞いているものは僕と子紅だけ
僕たちはただ無言でその歌声を聞いていた

「ひろさん」
「うん?」
歌い終わった若葉が僕を見ていった
「信じた人に裏切られるのって、とてもかなしいことなのです」
テイマーと呼ばれるものには自分を信じた動物を平気でお金に代える人や
楽しみのために自分を信じた動物を殺す人が信じられないぐらい沢山いる
そんな人たちをたくさん見てきたと、若葉は悲しそうに言った
「Skyさんもきっと、今でもひろさんを信じていると思うのです」
「・・・」
「ですからひろさんもSkyさんをずっと信じてあげてくださいなのです」
「そうだね・・・」
「はいです、Skyさんが信じられるひろさんでいれば、Skyさんたちは幸せになれるのだと思います」
「ああ・・・」

その夜、僕は夢を見た
土曜の夜、僕らはいつものようにべスパーの銀行前で宴会をしている
そこにはSkyがいて、エトランゼさんがいて、仲間たちが居て、若葉もいる
エトランゼさんはとても美人で
手の早い仲間は早速ナンパをしようとしている
僕とSkyはエトランゼさんを守るのに必死になって威嚇している
そんな光景を若葉や他の仲間たちは笑いながら見守っている
子紅にまであきれられて、僕たちは必死で言い訳をする
みんなが笑っている、エトランゼさんにも笑顔が浮かぶ
僕とSkyは顔を見合わせて苦笑いをする
それはとても楽しい夢・・・
それはたとえ覚めても幸せになれる夢・・・
何故ならいつかきっと、叶えられると信じられるから



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