銀行前の日常

 

 

 

 

 

この町の銀行の前はいろいろなひとたちが通り過ぎるのです

 

真っ黒な鎧に身を包んだ戦士さんや、

不思議な雰囲気を漂わせながら馬を進める魔法使いさん

冒険者の方ばかりではないのです

屋台でいろいろ便利なものを売っている職人さんや

綺麗な女の人に軽く会釈をして隣に腰掛ける吟遊詩人のお兄さん

妖精さんだってこの町では普通に歩いています

 

今日も銀行前はいろいろな人でにぎわっているのです

 

わかばも銀行前に愛犬のこべにちゃんと一緒にたたずんでいます

もうすぐ皆さんが宝捜しから帰ってくると思うのです

それまでここで2人、みなさんのお留守番をしているのです

お留守番は退屈ですけど、2人でなら平気なのです

「あぅ・・・でもすこしあついのです・・・」

帽子があるので日差しは大丈夫なのですが

照り返しに、こべにちゃんはちょっとだるそうです

わかばの影になる所で寝そべっているのです

でも、むかいの秘薬屋さんの方からは涼しい海風もきますし

もう少しすれば日も暮れて涼しくなると思うのです

 

「ポーションはいりませんか〜〜一つ35GPですよ〜〜」

今日も商人さんの元気な声が聞こえるのです

声のするほうを見てみると

銀行前の広場でポーション売りのおねいさんがポーションを売っているのです

「とてもよく効くポーションですよ〜〜一つ35GPですよ〜〜」

そのお値段は、わかばもとっても安いと思うのです

でも、わかばはポーションを使う機会は無いのです・・・こべにちゃんにも使えないですし・・・

そもそもあまりお金持ってないのです・・・

近くにいる皆さんも、ポーションには困っていないのでしょうか?

買いたいという声はどこからも聞こえないのです

「ポーションはいりませんか〜〜・・・ふぅ・・・」

結局、ポーションは売れなくて、ため息をついてしまいました

ついでに、顔をあげたおねいさんと目が合ってしまったのです

「あの・・・これって高いのでしょうか?」

おねいさんはすっかり自信を無くしちゃったみたいなのです

「たぶんたかくはないとおもうのです」

きっと皆さんポーションに困ってないだけなのです

「きっとそのうちうれるです〜」

「ふぁいとです〜〜」

とりあえず応援するのです

しょうばいは根気なのです

がんばるです〜

でも、わかばの必死の応援もあまり届かなかったみたいなのです・・・あぅ

「せっかくこの町は、商人と芸人の町と聞いてやってきたのですが・・・」

おねいさんはすっかり悲観モードなのです

だめです

あきらめちゃだめなのです

商人さんも芸人さんもどりょくが肝心なのです〜

あ・・・あぅ?

げ・・・芸人さんです?

「げいにんさんのまちなのです?」

この町に住んでいるわかばも知らなかったのです

「町の住民の多くが商人か芸人。そう聞きましたが?」

それは多分違うと思うのです・・・

確かに商業は発達してるはずですけど芸人さんは違うと思うのです・・・

少なくともわかばは芸人さんではないですし・・・

その時、わかばから少しはなれたところでムーンゲートが開いたのです

出てきたのは、宝捜しに行っていた皆さんなのです

「「「「ただいまー」」」」

「おかえりなさいです〜」

一斉に元気な挨拶が飛んできます。その顔ですと、きっと大漁だったのです

大漁なのもうれしいですが皆さん無事に帰ってこれてよかったのです

こべにちゃんもしっぽふっているのです

あぅ・・・?おおかみさんってしっぽふるです?

とりあえず、きにしないことにするです

それでは、皆さんも揃った事ですし、そろそろ支度に入るのです

おねいさんには少し驚いてもらうのです

「それじゃあ準備に行きますね〜」

「そうだな、それじゃ俺も行って来るかな」

皆さん、さっそく自分のやるべきことに取り掛かったのです

 

お酒を買いに行く人に

干草でお馬さんの囲いを造る人

食べ物を並べる人に

ピアノを作っちゃう人

 

突然のことに、なにが起きてるのかわからなくて

おねいさんは固まってしまっているようなのです

ちょっとかわいそうですけど

面白いのでしばらくこのままにしておくのです

わかばは食料の買出しなのです

橋を渡ったところにあるパン屋さんへ行ってと・・・

今日は奮発してケーキをお店にある全部なのです

あと、お肉屋さんでこべにちゃん用のお肉もしっかり買うのです

帰る途中こっそり二人でつまみ食いも、もちろんわすれないのです

蜂蜜屋さんの裏の木陰は海も近くてこべにちゃんも涼しそうなのです

戻ってきてケーキを全部並べ終わるころ、

銀行の横はすっかり宴会場となっているのです

日も暮れてきてだいぶ涼しくなってきましたし

お天気も宴会にはちょうどよくなったのです

 

戦士さんは山と積まれたお酒を一山、二山と飲んでいきます

魔法使いさんはマイグラスでワインを上品に飲んでいるのです

職人さんは通りがかった人にお酒を勧めています

ピアノの前で素敵なお歌を披露してくれる吟遊詩人さんにあわせて

妖精さんがお星を降らせてくれてます

 

たまたま通りがかった人も、普段は話したことも無い人も

この日は皆さん自由に飲んだり食べたりしているのです

さっきのポーション売りのおねいさんも、結局宴会に巻き込まれてしまったみたいなのです

お酒を飲んだのか、少し赤くなっているようなのですけど

でも、さっき見かけたときよりもずっと楽しそうなのです

ミルクをのんでるわかばを見つけてこっちにきてくれました

 

「やっぱり、この町は商人と芸人の町のようですね」

ボケと突っ込みで繰り出される魔法の火柱をみながら笑って言いました

ちょっと違う気もするのですけど、そうなのかもしれないのです

テレポートを繰り返しながらお酒を征服している熊さんを見てると反論する気もおきないのです・・・

それに笑顔のほうがわかばもうれしいのです

足元では、こべにちゃんが耳を掻いてるのです・・・あきれてるです・・・?

なにはともあれ、今日もベスパーの宴会は“いつもどおり”にぎやかに始まったのです

 

            〜おしまい〜